東
試合の始め方もそうですが、終わらせ方も難しいと思います。
古舘
先生
そうですねえ……(嫌な顔)。
東
そんなに嫌な顔しなくても……。
古舘
先生
もしスベったら、これだけ長い時間かけてやったのに…ってなるので。
東
それこそ最後の春高は、毎試合何かしらアイデアがあるじゃないですか。稲荷崎戦は双子速攻を変人コンビがブロック、音駒戦は全員が触ったから汗で滑って、鴎台戦は日向が倒れちゃう。しかも最後は山口の上を抜かれてるんですよね。
古舘
先生
そうですね。
東
そういうのにも意味が感じられるんですが、試合の終わる瞬間というのはどのタイミングで決めていたんですか?
古舘
先生
試合の終盤になって、終わりが見えてきて、ですかね。最初は全く決めていなくて、ラストの……10話以内。5、6話くらいの段階で。
東
傍目からするとけっこうギリギリなタイミングの気がしますね。残り数話って1か月くらいしかないじゃないですか。
古舘
先生
鴎台戦の場合は「ラストはエースの星海にトスが上がるだろう」って。高い打点をキープしてきた月島が疲労で離脱して交替で入ってすぐの人がブロックタイミングに慣れが必要な星海を止めるのは難しい。だから星海が3枚の上を抜いて、めちゃくちゃ難しいボールなので西谷も取れない。
東
音駒戦が汗で終わるのはビックリしました。担当になって2回目くらいにいただいたネームだったので「こんな終わり方があるんだ!」って。
古舘
先生
どっちですか、地味?やりすぎ?
東
意外というか「なるほど!!!!こんなやりかたが!!!」と。「地味だな」とは思わないです(笑)。
古舘
先生
日向は孤爪に勝ったし、猛虎が言うところの、練習みたいな試合というか、めちゃくちゃいい試合ができたから、ぶっちゃけ最後の1点はどんな形でもいいわけじゃないですか。誰が決めても、福永とかが最後に決めるとかが、むしろいいんですよね。練習試合の1セットみたいな感じで試合をやってるから。
東
どこにでもある1点ということですね。
古舘
先生
そうそう。ただ、それだとあまりにもわかりづらい。汲み取ってくれる人もいるでしょうけど。
東
もし福永が決めて音駒が勝ってたら「地味じゃないですか?」って言ってたかもしれません(笑)。
古舘
先生
(笑)。音駒の場合は、最後の1点に意味があっちゃいけないというか。意味がないほうがいいですよね。だからですかね。それで言ったら、誰のミスでも、誰が決めたでもなくて、一番良かったんじゃないですかね。
東
いい終わり方だったと思います。僕はネームで見た時に、練習試合と重なるシーンが「スゴイ!」と思って。もう感動して。
古舘
先生
「やるなあ」って?(笑)
東
「作家さんってスゴい!!」って、素直に思いました。
古舘
先生
少年・東の感想ですね(笑)。逆に稲荷崎戦は最後の一点に「宮ツインズ対日向影山」という構図があってそれはそれで大変でした。
東
4人が前衛にいてくれないと成立しないですからね。
古舘
先生
でも確か治は後衛だったんですよ。で、そのローテにしたことを後悔したんです。ただ、結果的にはハッタリも効いて良かったと思います。
東
なるほど、治にスパイクを打たせないといけないから、双子速攻・背が生まれたんですね。
古舘
先生
そうなんですよ。でも終わってみれば「双子は前衛だろうが後衛だろうが最後絶対双子速攻やるよな」って思えます。物語的に難しいローテから、最も宮ツインズらしいプレーが出た。最初からしっかり物語を組もうとしたら出なかったプレーだと思うので、タイプにもよると思いますが、最初から全部上手く作ろうとしなくてもいいかもですね(笑)。
でも、「ここのシーンのためにいくぜ」というのもあったほうがいい。尾田栄一郎先生が「絵が描きたくて漫画家になったので、好きな絵を描くために物語を進めます」っておっしゃっていて。
東
たどりつきたい絵を決めて、そこに向けてやっていくと。それも正解なんですね。
第5回へ続く