社会人少年漫画賞【第1回】「漫画家にはなりたくない」と思っていた少年時代 『食戟のソーマ』附田祐斗先生に聞いてみた

絵を描くことは好きだが、漫画家になりたいとは思わなかった附田先生。初めて漫画賞に応募したときも、漫画家という職業は意識していなかった。

2024/04/29


――漫画を読み始めたのは、いつ頃ですか?

附田
先生

小学生のときに「コロコロコミック」を読みはじめたのが最初です。ひかわ博一先生の『星のカービィ』が異様に好きでした。中学生になってから「ジャンプ」を読みはじめましたが、周りの友だちと同じく、普通の漫画好きな少年でしたね。

 

――はじめて「漫画ってすごい!」と思った作品はなんですか?

附田
先生

原体験は『星のカービィ』かもです。僕は絵を描くのは好きでしたが、6~7頭身のキャラクターの絵の再現ができず、模写も苦手だったんです。でも「カービィなら描ける」と思って改めて読んだら、カービィは1頭身なのにすごく生き生きと動いているし、拍手しているように見せたり、剣を持たせたり、飛んでいたり、様々な動きを表現する手法が詰まっていることに気づいたんです。その頃は、夢中でノートにカービィのいろんなポーズを描きまくりましたね。漫画の面白さとしては、『うしおととら』を読んだときの驚きが忘れられません。いまでもいちばん好きな漫画です。

 

――連載していた「サンデー」で読んでいたんですか?

附田
先生

いえ。『うしおととら』は、近所の年上のお兄ちゃんが単行本をたくさん譲ってくれて、そのなかにありました。『今日から俺は!!』もあって、「サンデー」寄りのラインナップでしたね。

 

――子どもの頃、漫画も描いていましたか?

附田
先生

小学校の頃から、ノートに『ドラゴンボール』とゲームの『聖剣伝説』を混ぜたような、オリジナル漫画みたいなものは描いていました。途中でノートがなくなったら、そこで終わり、という感じで最後まで完成させたことはありませんでしたが。

 

――その頃は、漫画家という職業は意識していましたか?

附田
先生

子どもの頃は「漫画家にはなりたくないな」と思っていました(笑)。よく単行本の巻末とかにその作家さんのエッセイ漫画みたいなのが載っているじゃないですか?みなさん「激務で」とか「徹夜続きで、寝れねえ!」というようなことを描いていたから、「漫画家って大変そうだな」と思って。でも絵は描き続けていて、大学生のとき、はじめて最後まで描き上げた漫画を「ジャンプ」に投稿したんです。そのときもまだ、その先に「漫画家」という職業があることは意識していませんでした。芸大のデザイン学科にいたので、周りにはグラフィックや広告デザイン系の賞を獲得する同期が多かったんです。誰々がデザインコンテストで賞を獲ったとか、誰々がコンペで受賞したとか。だから「僕もなんか賞をとりたい!」という対抗意識だったと思います。

 

――その初作品は、どのぐらいの期間で描き上げましたか?

附田
先生

完成まで2ゕ月くらいだったと思います。そもそも最初はどこかに投稿する気はまったくなくて。地元・福岡の親友に見せるためだけに、1ゕ月でノートに鉛筆で45ページ描きました。

 

――ひとりの友人のためだけに描いたんですか?

附田
先生

はい。その親友も趣味で漫画を描いていて「学校を舞台に鬼ごっこをする」という漫画の構想を話してくれたんです。面白そうなので、そのネタを譲ってもらって、僕が描きました。その頃、ちょうど大学の同期に「サンデー」の漫画賞をとった女の子がいたので、その鬼ごっこの漫画を見てもらったことがあったんです。そうしたら「めっちゃ面白い!」と褒めてくれて。その女の子は、「サンデー」の編集者から「才能のある人は、脳内で勝手にキャラが喋る、勝手に動く」と聞いていたらしく、僕の漫画を見てから、そういうことを僕にも訊いてきたんです。「キャラが動くことってある?」と。感覚的なもので「動くかも」と答えたら、作家性を感じると言ってくれました。なので、そこから1ゕ月くらいかけて作画をして、「ジャンプ」の月例賞に送ってみたんです。

 

――初作品なのに、かなり短期間で仕上げたんですね。

附田
先生

いま考えると、背景もキャラもダメダメでしたよ。トーンも使っていないし、Gペンの使い方もよくわからないから、全部ミリペンで描きましたし。背景も荒廃していて、パースを合わせる気もない。定規使えよ!ってところも、いっさい使っていない。全部フリーハンドっぽい感じで描いたほうが、『よつばと!』みたいでおしゃれだろうと思っていました(笑)。

 

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附田祐斗先生 tsukuda yuto

漫画家。第34回ジャンプ十二傑新人漫画賞で『牙になる』が十二傑賞受賞。2012年〜2019年、週刊少年ジャンプで『食戟のソーマ』原作担当。

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